「鈴音とは、幼なじみだ」

いつの間にかいなくなった尚人に携帯で連絡を取り、しばらく時間を開けるように言う。

屋上のフェンスにもたれ、座り雛子を抱き締めると、鈴音との関係を語り出した。

「もう、いいよ…?今までの関係…話さなくても…」

桜華の胸の中、上目使いで困ったように言う雛子の額にキスをする。

「でも…気になってるだろ?」

その言葉に視線を落とす。

「鈴音とは契約したんだ」

「け…いや…く?」

「そう。お互いが大切だと思える存在が出来るまで、許嫁という形を取る。」

そうすれば、言い寄ってくる奴らを一々相手する必要がなくなる。

親から知りもしない相手とのお見合いじみた事をされないで済む。

桜華は雛子にそう言った。

そして…

「俺は…雛子を、ずっと見ていたんだ…」

「えっ?」

落としていた視線を桜華に向ける。

「雛子は忘れてるだろうけど、一度親同士の話しに付き合わされて俺達会ってるんだ」

その言葉に、思い出そうと瞳を閉じた。