雛子は、いつまでも、この幸せが続くと思っていた。

父がいて、信頼できる使用人達がいて、仲の良い友もいる…

何の心配もしていなかった…





「行ってくるよ。雛子」

いつものように屋敷を出ていく父を見送っていた。

「気を付けてね…パパ…」

寂しそうな目に、行くのを躊躇ってしまう。
いつもと違って、今日は、出張で、2・3日は戻らないという。
いつも雛子は、出張になると寂しくてたまらなくなった。

「史乃達もいるんだ。大丈夫だね?」

髪を撫でる父に微笑むと頷いた。

「じゃ、行ってくるよ。柳瀬・史乃、雛子を頼んだぞ。」

「はい。」

「お気をつけて。いってらっしゃいませ。」
「雛子…行ってくるよ」

「いってらっしゃい。パパ…」



いつもと変わらない日だった…

何も変わらないはずだった…