「雛子に触るな!」

「触るな!」

小さな衝撃の犯人は、男の子だった。

「雛子は僕のお嫁さんになるんだ!」

「なるんだ!」

同じ顔をした二人の男の子。

「雛子は俺の嫁だ。お前らは別で見つけろ!」

「嫌だ!雛子がいい!」

「いい!」

雛子は二人の前にしゃがむ。

「もう…雛子じゃなくて、ママでしょ?」

「雛子はお嫁さんだ!」

断固として、ママと呼ばないつもりらしい二人に雛子はため息をつく。

三年前、雛子は双子の赤ちゃんを産んでいた。

名前は…

「とにかく、雛子は渡さねーよ!」

桜華は、雛子を抱き上げ、余裕の笑みを向ける。

「「はーなーせー!」」

二人は桜華を押したり引いたりするものの、びくともしない。

「雛子は俺の運命の女だ。お前達は別にいるよ!」

「「やだぁ!」」


「じゃーな!椿!(ツバキ)楓!(カエデ)」

桜華は雛子を抱き抱え、二人を振り切って走り出す。