「おじさん!」

手術室に入ろうとしている鈴音の父親に掴みかかる。

「お願いですっ…雛子を…助けて下さいっ」

すがるように頭を下げる。

「分かっている。しかし…子供は諦める事になるかもしれん…」

桜華の肩を掴み、撫でると手術室に入っていった。

「お願いします…っ」


閉まっていく扉に頭を下げた。

「桜華君!」

晋也が走ってきた。

椅子の背もたれに体をまかせ、グッタリとした祐希奈を見つける。

晋也は深々と頭を下げた。

「すまないっ…」

「はは…きゃはは…」

祐希奈が小さく笑った。

桜華は光を失った目で祐希奈の前に立つ。

「子供…いたんだぁ…」

祐希奈の目に涙が溢れる。

「どうしよう…」

泣き崩れる祐希奈に桜華は手を伸ばした。

細い首に桜華の右手が触れた。