寝室のクローゼットの中に隠していた編みかけのソレを取り出す。

見ているだけで、優しい気持ちになる。

自然と笑みが溢れた。

「っっっ!。!!。!」


ふいに外で騒ぎ声が聞こえた。

外に出てみる。

「お待ちください!」


「うるさい!私を誰だと思ってるの!」

玄関から少し入ったエントランスにメイドに止められるのも聞かず入ってきた祐希奈がいた。

二階に雛子の姿を見つけると、メイドを振り切って、かけ上がってきた。

「雛子様!」

「祐希奈ちゃん…」

祐希奈は階段の上まで見に来ていた雛子の前に立った。

「何で…」

体の奥底から絞り出すように言う。

可愛らしい顔が歪んでいる。

騒ぎに鈴音もやって来た。

「雛子!」

「何でアンタなの!何でアンタばっかり幸せなのよ!何で…」

ギリギリと歯を食い縛る音がする。

ジリジリと祐希奈が雛子に近づいてくる。

「何で…アンタなの?私とアンタの何が違うのよ!アンタなんか…」

祐希奈の両手が雛子に伸びた。

鈴音が慌てて駆け出す。

「アンタなんか…いなくなればいいのよ…」