あれから美優は、少々元気がない。
俺が挿入を断ったから?
いや、それは違うと思う。
なんか、今日の美優は少し盛り過ぎてる
ような気がする。


俺はゆらゆら揺れる電車の中で、
ボー、っとそんなことを考えていた。
瞼をとじて、さっきのトイレでの出来事を
振り返る。




(( しゅうちゃん…入れて… ))
美優の発言が気になる。
美優は俺との子供が欲しいのか?

「…ちゃん」

それとも、生が楽しいのか?

「…うちゃん」

いや、婚約もしてるわけだし、
そろそろゴム無しだって良いわけだよな。
別に俺、美優どの子供できるの嫌なわけじゃないん…
「しゅうちゃん!!!」

ハッと、誰かの声で我に返る。
声のする方を見ると、心配そうに俺の顔を除く彼女だった。
「何ボーッとしてるの?渋谷ついたよ」
さっきとは違って、いつも通り
元気でフレッシュな美優だった。

「あたし、ストロベリーのフレーバーがいいな♪今だけ限定なんだ」
俺の手を握って、軽い足取りで
ポップコーン屋さんに向かう美優。

『はー?ストロベリーなんてポップコーンじゃねぇ。キャラメルだ、キャラメル』

俺はいつの間にか、さっきまでの
悩みは忘れていた。

いや、忘れることにしていた。

だって、彼女がこんなにも笑うから。


別に嫌な悩みじゃない。
だけど、こういうことは俺一人で
考える問題じゃない。
俺だけが孤独に頭悩ませる問題じゃねえんだよな。

 
これから二人で、ちゃんと悩んで、
ちゃんと進んでいきたい。
俺はコイツが好きだ。





それから俺達は、お昼を食べたり、
映画を見たり、洋服を買ったりして
久々のデートを楽しんだ。