『たーだいまー』
張り切って玄関に入る。
玄関には、かかとの整った、見慣れた
ピンクのパンプスが綺麗に揃っていた。

足先で綺麗に靴を脱ぐ。
スリッパに履き替え、リビングへ続く
廊下を歩いていたとき。
リビングから、見慣れた顔が飛び出してきた。

「おかえりっ」
そう言うと、彼女は俺に飛び込んできた。
『ただいま』
「結構早かったね」
『Bダッシュしてきたから』
「ふふ。手、めっちゃ冷たいね」
俺の手を握って、温めようとしてくれる
美優。ヤバ、可愛い。

『外、寒かったよ』
「リビング、暖かくしてたよ。中入ろう」
美優に腕を引っ張られ、リビングへ向かう。

部屋は、美優の言う通り暖かかった。
人工的な、だけど落ち着く暖かさ。

コートを脱いで、ソファに腰を掛ける。

「コーヒー入れようか」
『サンキュ』
キッチンに走る美優。
美優は、最近から自炊を始めた。
俺といつ結婚してもいいように、って。




「はい。ブラックでいいんだよね」
美優は、トレーにコーヒーカップと
チューハイを乗せて持ってきた。
そして、コーヒーを修哉の前に差し出した。

美優は、修哉の向かいのソファに
腰掛けて、テレビをつけ始めた。


『てかさ。美優?』
「ん?」
修哉が声をかけると、美優は目線を変えずに返答した。
『誕生日、おめでと』
修哉がそう言うと、美優は
目線を修哉に変えて、
もともと大きい目を
更に大きくして、顔を赤く染めた。

「急にビビる。ありがと。よ、よし。
飲もうかっ」
トレーに持ってきたチューハイを
美優は強引に開けて飲み始めた。
きっと、緊張紛らしに。


グイグイとチューハイを飲む美優。
修哉は、美優の目の前に
さっき買ったプレゼントを差し出した。