「ありがとうございました」
商品を受け取って、店を出る。
外は、さっきよりも風が強くなっていた。

『さみ~』
盛った髪が、崩れてしまう。
まぁ、これから予定ないからいいけど。

ポケットに手を入れて歩いていると、
ポケットの中で携帯が鳴った。


着信源は、゛美優゛。
俺の彼女。

応答ボタンを押すと、聞き慣れた
可愛い声が聞こえてきた。
「もしもし?あ、しゅうちゃん!
今までどこ行ってたの?早く帰ってきてよ~」

彼女は俺を、〈しゅうちゃん〉と呼ぶ。
俺の名前が、修哉(しゅうや)だから。
その、もじり方のセンスが可愛い。

『ごめんごめん。仕事だった』
「嘘つき」
『あ、バレた?』
何気ない会話が、とても楽しい。
「すぐバレるよ。今日は仕事ないんだよね?」
『うん。空けといたよ』
「やった!あたしも明日仕事ないんだ。
ゆっくりできるね」
『うん。なんかほしい物ある?買って
帰るよ』
「あ、大丈夫だよ。さっき近くのコンビニで、チューハイ買ってきた」
『あんまり酔うなよ』
「え、そのつもりだけど?」

美優は、かなりの酒豪だ。
そして、酒乱。
酒に乱れると、愛に乱れる。
なんか、肉食系女子は嫌いじゃないけど。
普段とのギャップに、未だ慣れない。

「てか、風強いね。しゅうくんの携帯、
めっちゃ風の音拾ってるよ」
『あ、ごめん。もうすぐ家だから』
「うん。部屋暖かくして待ってるね」
『おう。んじゃあ、あとでな』


通話終了ボタンを押す。
携帯をポケットに戻すと、俺は一気に走りだした。
家に大好きな人がいるのは、
心強いし、暖かい。

俺って幸せモンだ。




向かい風は、さっきより落ち着いているような気がした。