家に帰ると、頬に何かが伝った。
「…何これ」
そっと拭うと。
「涙って…、こういうものなんだ…」
16年間生きた中で、初めて流したものだった。
「…はは」
自己犠牲をしてまで、藍をとった。
彼を幸せに出来るのは自分なんだと。
1人ぼっちにはさせたくないと思った。
玄関に座ったまま、目を瞑った。
藍はいつも哀しげな瞳をしていた。
何かを言いたげだった。
言おうとして、言葉を詰まらせていた。
1人にまたなるんだ、そう思わせていたのかも知れない。
引き取ってくれた藍に対して、最悪なことをした。
「…ごめんなさい」
藍が私を好きでいてくれたのに、
一緒に住んでくれていたのに。
私は違う人を好きになってしまった。