「俺は男だから、大丈夫だよ」

「…女の子は弱い方が多いと聞いたんですけど、本当にそうなんでしょうか」

「うぅーん…、どうだろ。でも間違いなくあゆちゃんは、弱いね」

「そうですか」

「うん。それに髪とか茶色で可愛い」

その時、ふいに思い出した。

(…あ。藍と初めて会った時、そういえば…)

藍と私は許嫁だった。

それを今更に思い出すなんて。

(そうだ。初めて会った時、警戒してて…)

だけど今、何故か窪野さんのことを考えている自分がいた。

「あゆちゃん、どうかした?」

「あ、いえ…。なんでもないです」

「そう?」

この感情は忘れたほうがいい。

そう思った。

「着いたよ、はぐれないように手」

「はい」

言われるままに着いていくと、大きな建物が見えてきた。