窪野さんは、いつもの電車に乗った。
「電車通学なんですか??」
「そそ」
「今、学校授業中じゃないんですか?」
「今は自由時間で、ほら。お祭り中なんだから、大丈夫だよ」
「そうですか」
座る席は、お年寄りに譲る世界。
若い人たちは律儀正しく立っている。
電車の天井には、わっかのようなモノがついている。
窪野さんはそれを掴んでいる。
私も同じ様に掴んだ。
だけど、電車が大きく揺れて倒れそうになると。
「危ないよね、じゃあドアによりかかって」
「?はい」
言われたままにすると、窪野さんがドアに手を当てた。
(確かこういうのって、壁ドンだっけな…)
テレビでやっていたのを思い出した。
「窪野さんが危ないですよ」