「あゆちゃん?」
窪野さんが手を引いてくれる。
「いえ…、この暗闇が兄と体験したのととても似ていて…」
「そか…」
「少しだけ思い出してもいいですか?」
立ち止まると、窪野さんは頷いてくれた。
「兄と親戚に預けられた時、私達は蔵屋敷に閉じ込められたんです。
2・3日、ご飯はくれませんでした。
必死に扉を叩いていると、近所の人が助けてくれたんです。
それ以来、兄はすぐに家を出ようとバイトに専念して学校を中退したんです」
ふと思い出せば、生きることに必死だった。
兄はいつも私思いだった。
「…辛い体験をしている分、後にくる幸せはどんなことよりも大きいんだよ」
窪野さんがそう呟いてくれた。
「じゃあ行こう」
そういって、お化け屋敷から脱出した。
「あれ。藍がいないですね」
「俺も友達もいないし…」
私は慣れないケータイを取り出して、たどたどしくメールをした。
数分後、藍はバイト仲間と遭遇したからそっちと回っていたらしい。