何でコイツはそこまで、幸せになれないんだよ…。


ハンカチで頭の血を拭う。

「大丈夫だ。今救急車来るから」

「窪野さん……」

「ん?」


あゆみの声がか細い。

何かを伝えようとしているから、耳を近づけようとすると。



「……好き」



そういって俺の唇にキスをした。

一瞬、俺は意識が止まりかけた。



そしてあゆみは俺の手のひらを離した。

「あゆみ…??」



あゆみは力なく、横たわった。

もう口も開かない。


「イヤだ…、そんなの……お前死ぬなよ…なぁ…!」


俺の泣き叫ぶ声も、多分夕美にしか聞こえてないんだろう。