窪野さんが、私のお兄ちゃんを誇らしげに話していた。
さっき私も一瞬見た。
校庭から立ち去る背中を。
「…本当に、強いよなぁ。お兄さんは」
「そうですかね」
「そうだよ」
「あ、窪野さん。藍は帰っちゃったんですけど。
伝言で、今日の仕事で話がある、ですって」
「わぁ。果たし状みたいだなぁ」
「確かに」
私は少しだけ笑みを見せた。
「あゆちゃん、少しだけ抱きしめさせて」
フェンスから手を離し、窪野さんに近づいた。
「…温かい」
きゅっと抱きしめてもらうと、私も温かく感じた。
「ねぇ、あゆちゃん」
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