顔をあげると、やっぱり予想通りの人がいた。

「…あゆちゃんのお兄さん」

「そら、久しいな。仕事場でもあんまし話さないし。

話したのは、あの日以来か」


あの日。

それは俺が、あゆちゃんを貰いに行った特別な日。


「蓮君、お前がこの高校選んだのも。

先輩の女たちに、俺の大事な妹を苛めたのも。

お前なんだろ」

「はぁ?誰がそんなまね…」


俺は一瞬の光景に、言葉が出なかった。

お兄さんが、アイツをふっ飛ばしたんだ。

軽々しく、壁にぶつかった。

「…っ」

「俺の妹を苛めたお前が、今でも俺は許せてない」

「でもあの日…、お前と喧嘩して俺が負けたから…」

「だから許せる?馬鹿なこと言うんじゃねぇよ!」