「どうしてここへ?」


ポケットから取り出したハンカチで濡れた私の足を拭いながら、滝山は穏やかな笑みを浮かべた。


「事務所へ参りましたら薫子様がご不在だったので、もしやこちらではないかと伺った次第でございます」

「そうじゃなくて、」

「私が戻った訳、でございますか?」


滝山に頷く。


「何か荷物でも?」


私の質問に、滝山は首を横に振った。


「北見さんからご連絡を頂戴しまして、」

「――北見さんから!?」


思わず食いつく。


「北見さんが何て?」