ストーカーだと言って撃退してほしいと、私に頼んできた相手だったのだから。
「既に出来上がったエリートを相手にするのもいいけど、まっさらな男を一から育てるのも面白そうじゃない?」
麻紀さんはそう言ってのけたのだった。
吉池さんはそれを聞いて、まんざらでもなさそうに頭を掻いた。
麻紀さんがそばにいたら、受験勉強どころじゃなくなるんじゃないかしら。
余計な心配は徒労に終わりそうだった。
大きなバッグから顔を覗かせていたのは、参考書や問題集の類で。
「これから図書館へ行ってくるの」
麻紀さんは付き添いかと思いきや
「僕の家庭教師なんです」
吉池さんが照れくさそうに笑う。
「私、こう見えてもT大卒なのよ」
「えっ……そうだったんですか」
ホステスを舐めてかかってはいけない。
そんな二人の背中も見送る。
問題を出しながら、それに答える吉池さん。
楽しそうな受験勉強は、まだ続きそうだった。