コーヒーを一口飲んで息を吐くと、沙織さんは目に微笑みを湛えたまま言ったのだった。
「人間、やろうと思えば何だって出来るってことなのね」
真意が掴めなくて、私はただ沙織さんを見つめるばかりだった。
沙織さんが意味深に笑う。
「……あの……」
どうしたらいいのか戸惑っていると、沙織さんはスッと立ち上がった。
「お邪魔したわね。そろそろ失礼するわ」
機敏な動きで事務所のドアに手を掛けると、肩越しに軽く手を振って外へ出る。
咄嗟にその後を追って、私も外へと続いた。
「あっ、あの、」
階段を下りながら、沙織さんの背中に声を掛ける。