「薫子さんって可愛い」


年下に言われてしまった。


「ま、でもそれじゃ、私を警護することができなくなるものね。二人だけの世界を作られちゃ堪らないから」

「――だから、違うんですってば」


思わず出た大きな声に、店内の視線が一斉に向けられた。


そこには当然ながら北見さんも含まれていて。

冷たい視線が注がれた。


……痛い。


そして、麻紀さんが代わりに回りのお客に謝ってくれたのだった。



「このお店にいるときにも、見張られているようなことはあるんですか?」

「……それはないかな」


麻紀さんはしばらく考えた後、そう答えた。


「それよりは、店を出た後だとかにつけられてるような気がしたり。今、誰か怪しい人が中にいるの?」

「いえ、いないと思います。……多分」


自信なさげに言う私に「頼りないわねぇ」と笑った。