「リア様、お目覚めの時間ですよ」
低く心地いいテノールの声が鼓膜を震わせる。
夢の中に落ちていた私の意識も徐々に覚醒し、私はゆっくりと瞼を上げる。
始めは、ボヤッと視界が霞んでいたが、暫くするとハッキリ見えるようになった。
「リア様、本日は随分と眠ってらっしゃいましたね。
昨夜、真夜中まで起きてらっしゃったからでしょうか」
と、この男ー執事、エリスは櫛で私の髪の毛をときながら話す。
エリスが言う昨夜の出来事ー女児誘拐犯を仕留めたことだろう。
先日からこの街では貧民層の子供、特に女児が夜な夜な姿を消すと騒がれていた。
犯人はその街の長の娘であり、彼女は、同性愛者であったため、女児を攫っていたのである。
まぁその女も昨日、エリスによって闇へと葬り去られたのだが。
それにしても、昨夜は好きじゃない血の匂いを存分に嗅いでしまった。
こんなことなら、捕まらなければ良かったなと頭の隅で思う。
こうして、この街で事件の犯人を仕留めるのも、3度目だ。
別に私たちは、''正義の味方''でも何でもなく、ただ、''ある目的''のためにこうして事件解決とやらをしている。