「ごめんね。あれは世尾くんを驚かそうとした演技。……騙された?」




「なっ……! 生嶋さん……」





 感情がころころ変わりすぎてどっと疲れた。




 それよりも、彼女は悪戯(イタズラ)を仕掛けるような人だったのか。





 彼女の色々な一面を知っていく度、知れた喜ばしさと切なさが絡み合う。



 でも、そんなことをできるほど元気ということなのだろう。




 
 ぼくは深い溜息をついて、二つの想いを口に出した。




「ごめん。……あと、ありがとう。シュシュを大切にするって言ってくれて」




 少し顔を赤らめて、笑う。




「わたしはごめんよりありがとうの方がいいな」




「分かった。……“ありがとう”」




「どういたしましてー」





 二人で笑い合うこんな温かい時間は、なんだか久しぶりに感じられた。





 しばらく正座したままだったからか、立ち上がろうとするとジーンとした痺れが両足を襲撃する。



 よろよろしながらなんとか椅子に座ると、その様子を見ていた彼女の口から可愛らしい笑みが零れた。





 しばらく沈黙が続く。



 ぼくは沈黙という名の膜を破るべく、わざとらしく思いついたようにすっとんきょうな声を上げる。