エレベーターに向かい、数人の人々とエレベーターがやってくるのを待つ。
今何階にいるのかを表す赤い数字をぼーっと見つめていると、やがて数字は一に変わった。
扉が開く。
中からは泣き腫らした赤い目をしてぽつぽつと言葉を交わす女子三人と、年配の女性、若い男性二人組が出てくる。
高校生と見られる女子三人が横を通った時、ぼくの耳は一人が発した、思いがけない啜り混じりの言葉をチャッチした。
「幾羽ちゃん、せっかく仲良くなれたのに――――……」
彼女の名を聞き、はっとして後ろを振り向くと中でも長身のボーイッシュな女子がお下げの子の頭をこてんと小突いていた。
「……泣くな。あたし達が泣いたら、幾羽はもっと辛くなる」
――――――この人達はもしかして。
「あのー、すいません……乗りますか?」
後ろからかけられた迷惑そうな女の人の声で前に向き直ると、エレベーターの中には一緒にエレベーターを待っていた人の姿があった。
しまった。
その中に飛び込むのも気まずく、ぼくは大丈夫です、すいませんと頭を下げて見送った。