彼女は満面の笑みで、ぼくと生嶋さんの髪の色のシュシュを左腕に付ける。



 
「本当にありがとう、世尾くん! 大切にするね。……似合う?」




 どう、と彼女はぼくにシュシュを付けた腕を見せてきた。




「似合ってる」




 そう言うと、本当に嬉しそうに、キラキラとした笑みを浮かべた。




 そんな彼女がシュシュを指で優しく撫でながら、思い出したように言った。




「ねぇ、なんでこのこと誰にも言っていないって分かったの?」




「えっとねー……学校でそういう話聞いたことなかったし、誰もお見舞いに来なかったから……。なんとなく、そうなのかなって」




 「なんとなくって」と小さく笑うと、ふっとどこか悲しそうな顔になる。




「学校には言わないで下さい、ってお願いしたの。



 友達には……言えなかったんだ。すごく言い出しにくい話だし……ずーっと引きずってたらもう、こんなに進行してて」




 仕方がない、と諦めの香りを漂わす彼女に、ぼくは自分の考えを口に出してみた。




「友達に言ってあげた方がいいよ、絶対。後で後悔する」




「嫌だよ﹏﹏……。女子の友情って怖いんだから。


 嫌いなのに笑顔で接してきて、裏では悪口ばっか言うんだよ」