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 好きになった子は、余命があと数日しかなかった。




 ――――――なんて、どこぞの映画や漫画みたいな話。





 なぜ、ぼくと生嶋さんがその物語の役者に選ばれてしまったのだろうか。



 ぼくたちにしなくちゃいけない理由は、なに?





 せっかく、お互いのことを知り始めたのに。




 せっかく、“これから”のことを考えて幸せそうな顔をしていたのに。






 どうしてこんなにも脆(モロ)く、簡単に、“幸せ”って崩れていってしまうのだろう。






 ぼくと生嶋さんは付き合っていない。



 生嶋さんがぼくのことをどう思っているのかも分からない。




 所詮、ぼくの片思いだ。




 けど、確かに幸せだった。






 どうして。どうして。どうして?




 誰にぶつければ良いか分からぬ思いが胸の中をいっぱいにする。





 通り抜けることのできない言葉が、想いが、喉につっかえて。



 
 ぼくは一晩中今日一日のことを頭に思い返しながら、しょっぱい雫で枕を濡らし続けた。