このまま喧嘩になったら、オレはきっと負けるだろう。



 喧嘩とかあまりしたことがないし、涼峰さんの前で喧嘩はあまりしたくない。


 男はやっぱり怖い、と思われてしまうから。



 それに、そんな場面を見てほしくない。



 そこでオレは涼峰さんと茜に、こそっと小声で耳打ちした。




「オレが手を叩いたら、校舎に逃げろ。いいな?」



  
 え、と戸惑った顔をしていたが、二人は怯えた顔で頷いた。


 ふ、と微笑を浮かべ、オレは彼女達のいちさな頭をくしゃっと撫でる。



 びくびくっと涼峰さんが身震いしていたのが悲しいけど、今だけ、こうさせてくれ。



 
 涼峰さんと茜を自分の身で隠し、静かに男達を見つめる。


 いつになったら動くんだ、と男達が思いだしただろう瞬間、




 バンッ!




 男達がビクッと少し飛び上がり、足の速い涼峰さんを先頭に、茜もついて走っていく。



 それを見た煙草を吸った男が叫んだ。