姉のような茜は、絞りだすような声で答えた。



「……っちが、います…………っ」



 微かに震える茜を一瞥(いちべつ)し、




「……ま、中入って喋ろうぜ」
 



 男は茜の肩を掴んで押す。


 
 いや、校舎内でさっきの様に喋るはずがない。


 校舎内でするとしたら、使われていない教室とか、屋上――――――。



 
 ――――――――やばい。




 本能的にそう感じた。


 行くもんかと踏ん張っている茜から涼峰さんを引き剥がし、眉毛にピアスをふんだんにつけた男が涼峰さんを連れて歩いていく。



 茜が涼峰さんに手を伸ばしたが、その手は涼峰さんの代わりに銀色ピアスの男が握った。



 
「俺等と楽しく遊ぼーぜ?」



 今度は、涼峰さんが抵抗した。


 触れられた肩から大きな手を離すように身をよじらせ、叫ぶ。




「嫌っ!」




 男が驚き、掴み直そうとしたとき。
 



 一筋の光が流れた。
 



 気付いたときにはもう、オレは飛び出して叫んでいた。





「凛っっ! 茜っ!」





 凛も茜も男達も、全員が驚いて突然現れたオレを見る。