「凛ちゃんじゃない?」



 タレ目の女子が凛に視線を向けた。



 だけど、凛は顔を強張らせたままどこか一点を見つめ、立ち尽くしている。


 よく見れば顔が青くなっていて、微かに足が震えていた。



 男性恐怖症って、これほど……!?


 オレが前に立ってるだけじゃねーか。


 それ、だけで……。




 でも、男を怖がる凛には悪いけど、せめて一回くらいは喋ってみたい。


 ごめん、凛。



 オレは今までで一番のスマイルを浮かべながら、凛にハンカチを差し出した。



「はい」


「…………」



 なかなか受け取ってもらえなかった。