(まぁ、しょうがないか。さて、今日の夕飯は……? 餃子? それも焼き餃子!?)

「おい、春子!! 何で水餃子じゃ無いんだ? 餃子と言えば水餃子だろう!」
「えっ?」

春子は驚いたようだった――と捉えたのは海斗の思い違いで、本当の所はなに言っているのか春子は聞こえなかったのだ。

(あの人、何を言っているのかしら……。)

実際、夕飯どきのキッチンは騒がしい。料理によっては4時頃から支度を始める。ピークは6時。只今の時刻、6時12分37秒。

グツグツと音をたてる鍋。ピーピーなる電子レンジ。

騒がしいの一言に尽きた。

海斗は不機嫌だった。だって焼き餃子なのだ。水餃子じゃなくて。
海斗は顔をプウッと膨らました。


   ***

「やっと出来たわ!!」春子は嬉しそうな顔をした。

「『やっと出来たわ!!』じゃない!!」

海斗は机をバンと叩いた。

「どうして焼き餃子何だ!」

「どうしてって……。じゃあ、餃子以外何が良かったの?」

「水餃子だ。」海斗は一拍おいていった。
「餃子といったら水餃子だろう!」

「はぁ?」今度は春子がキレる番だった。

「何、我が儘いってんの?」