「愛梨は昔っからくだらない恋愛映画が好きだったよなー。俺がどれだけ付き合わされてきたか。その度に鼻水垂らしなが泣いてたよな。あの顔見たら、絶対に誰もがドン引きするし」
映画が終わったあと、陽平はシレッとそう言い、余韻に浸っていたまりあとあたしの雰囲気をぶち壊した。
「鼻水なんて垂らしてないからっ!それに、言うほど陽平と映画に行った覚えもないんだけど!」
芹沢君とまりあの前で変なことを言うのはやめてくれ。
恨みを込めた目でジロッと見やると、悪態をついてスッキリしたはずの陽平は、面白くなさそうにふてくされた顔をしていた。
いや、ふてくされたいのはこっちなんだけど。
でも、ガマンガマン。
今日は芹沢君を応援するために来たんだから。
なんとか気持ちを切り替えて、4人でファミレスへ移動した。
4人掛けの席にまりあと並んで座って、真正面には陽平の姿。
正面にいるのが陽平っていうのは気に入らないけど、仕方ない。
芹沢君のためだ、芹沢君の。
「もう食わねーの?いつもはライスの大盛り頼んで、引くぐらいガツガツ食ってんのに。デザートも2個ぐらい余裕でいけるだろ?」
食べ終わったあと、陽平は平然とあたしに悪態をついた。
イジワルな顔が憎たらしい。
でも、グッと堪えてガマンガマン。
「なんなら俺がもう1個デザート頼んでやろうか?大食いの愛梨には足りないだろ?ムリすんなよ」
「ムリしてないからっ!それに、あたしの胃袋はそんなに大きくないもん」
ライスの大盛りを頼んでるのは事実だけど、デザートはいつも1個だもんっ。
「ふーん、あっそ。つまんねー奴。それより、芹沢!愛梨の奴、小4までオネショしてたんだぜ」
「してないよ!!変なこと言わないで!バカ!」
さすがにそれは大否定した。
そんなウソをつかれたんじゃ、たまったもんじゃない。
「愛梨の小学校の時のあだ名は『アホりん』でさー、バカな愛梨にピッタリだったんだ」
聞き流して来たつもりだけど、ここまでバカにされたらもうガマンの限界。
アホりんってのは、男子が勝手に呼んでてだけだ。