「お、サンキュー」
「今度は俺に貸せよなー!」
「その次は俺ね」
男子達があっという間に周りを取り囲み、騒がしくなってしまったので、それ以上何も言うことが出来なかった。
陽平もあたしではなく、もう男子達の輪の中に溶け込んでいる。
っていうか、映画に誘うよりもまず……。
言うべきことがあるでしょ。
昨日のこと……。
曖昧にしてしまったけど、そこを解決しなきゃ映画なんて誘えないよ。
「映画、陽平君も誘うの?」
“今週の日曜”というワードにピンと来たのか、からかうようにあたしを見るまりあ。
ニヤッと笑って、何か言いたそう。
「うん。チケットが4枚あるからって、芹沢君が」
「へー。学年で人気の高い2人と行けるなんて、めちゃくちゃラッキーだね」
あたしの気持ちを知る由もない呑気なまりあは、そう言って嬉しそうに笑った。