「実はわざとなんだ」
教室に戻ろうと踵を返した時、法山君があたしに向かってポツリとつぶやいた。
「えっ?」
わざと?
なにが?
わけがわからなくてポカンとするあたしに、法山君はクスッと笑う。
その顔はなんだか可愛くて、警戒心が薄れていく。
「わざとボールを当てたんだ」
「えっ?な、なんで?」
それって、何気にひどくないですか?
わざとって。
あたし、嫌われてるんだろうか。
それはそれでショックだな。
初対面の人に恨まれてるなんて。
「吉崎さんとお近付きになりたかったから」
えっ……?
法山君は照れくさそうにニッと笑った。
その笑顔は屈託がなくて純粋で、頬がほんのり赤く染まっている。