「愛梨のくせに生意気」



「ちょ、ちょっと!やめてよ!」



大きな手で髪を掻き回されて、思わずイスから立ち上がった。



こんなにドキドキして、でも胸が張り裂けそうなくらい痛くて。



必死に普通に振る舞ってるのに、それをぶち壊しにするようなことをしないでよ。



ダメなんだって。


まだ、何でもないようには出来ないの。


落ち着け、落ち着くんだ。


あたしの心臓。


陽平にドキドキしちゃダメ。


陽平には深田さんがいる。


こんなこと、向こうはなんとも思わずにしてるんだから。



「ん」



「え?なに?」



急に手をあたしに向けて差し出した陽平は、ニッと笑いながら何かを催促してくる。