「もーらい」
「ちょ……っ」
プリンをすくって口に運ぼうとした手を取り、陽平はそれを自分の口に入れた。
「やば、うまっ」
「……っ」
知らないでしょ?
今、あたしがすっごくドキドキしてること。
間接キスだ!
なんて、バカなことを考えて嬉しくなったこと。
りんごみたいに、顔が真っ赤になっていることを。
余裕たっぷりで何でもない顔をする陽平は、たかが間接キスで何も感じたりはしないよね。
あたしだって、陽平のことを何とも思ってない時はそうだった。
間接キスなんて、今まで普通にしてたことだもんね。
はぁ。
なんだかなー。
どうすればいいのかな。
友達から好きな人に変わって、気持ちの変化が追いつかない。
「よし、そろそろ戻るか。傷、痛くないか?」
さっきと同じように心配顔を見せる陽平は、恐る恐る手を伸ばして頬の傷に触れた。
ーードキッ
優しく慈しむように、愛でるように撫でる陽平の指にくすぐったさを感じる。
「う、ん……大丈夫」
「そっか。なら良かった」
ねぇ、もしケガをしたのがあたしじゃなくても。
同じように傷に触れた……?