花火をしている広場を出て水道まで来ると、さっきまでのざわめきがウソみたいに辺りは静寂に包まれていた。
木の葉が風に吹かれてザワザワ音を立てる。
「いたたっ……」
「我慢しろって」
水に濡れた冷たいハンカチが傷に沁みる。
痛さに顔をしかめたあたしに、優しく慰めるように陽平の手が頭をポンポン撫でてくれた。
ズルいよ、こんなの。
ドキドキしちゃう。
もっと……好きになっちゃうじゃん。
「陽平はやっぱり優しいね」
「お、今頃俺の魅力に気付いたのか?」
二カッと笑いながら、冗談っぽくハニかむ陽平。
その顔に胸が高鳴る。
な、なにこれ。
本当にもう……。
あたし……。
「誰にでも優しいもんね」
「はぁ?別に誰にでもってわけじゃねーよ」
「そう?こんなに優しいから、卒業式の日に3人にも告られるわけだ」
「あ、あれは!お前に気にしてほしくてわざと……っ」
え?
「な、なんでもねーよ」
「…………」
あたしは何が言いたいんだろう。
陽平からどんな言葉が出るのを期待してるの?