その時。


大きな背中が、花火を振り回す男子に近付いて行くのが見えた。



ーードキッ



無造作にセットされた茶色い髪が風になびく。


まっすぐ向かって行く背中を、息つく間もなく見つめていた。


その後ろ姿が誰なのか、一目見た瞬間すぐにわかった。


大好きな、大好きなーー。


さっきまであたしの隣にいた、陽平の背中だったから。



「やめろって。さすがにそれはハメを外しすぎだろ」



陽平は悪ふざけする男子の手を持って、それを地面の方に向かって下ろさせる。



花火はそこで終わり、明るかった場が一気に真っ暗になった。



「いいだろ~、夏休みなんだし。楽しめればそれで良くね?固いこと言うなよ~」



反省のカケラもなく、その男子は手にしていた花火をポイと投げ捨てた。



そして性懲りも無く、次のロケット花火に手を伸ばす。