「バカ、ムリして笑うなって。こんな時ぐらい、素直に怖かったって言えばいいんだよ」
そう言って、陽平はまたあたしの手をギュッと握った。
陽平の手は魔法の手みたい。
温かくてポカポカする。
さっきまでの恐怖がウソみたいに薄らいでいく。
……知らなかった。
陽平の手がこんなに温かくて、たくさんの優しさに溢れていたなんて。
それに、こんなにも大きかったなんて。
「これからも、俺がお前を守ってやるから」
「え?」
「もう2度と怖い目には遭わせない」
陽平はあたしの目を見ながらニカッと微笑む。
優しい陽だまりのような笑顔。
知らなかった……こんな顔も出来るんだね。
イジワルな顔しか見たことがなかったから。
「あ、ありがとう」
なぜかドキドキしてしまい、とっさに目をそらした。