陽平は銀髪男の手からあたしの手を解放してくれた。
それはあっという間の出来事で、無意識にあたしはまた陽平の腕にしがみつく。
黒いオーラを放つ陽平から目が離せない。
これだけの人数に囲まれてるというのに、堂々としていて負けない自信があるように見える。
普段からは考えられない姿に、あたしの中で不安がどんどん大きくなって行く。
「よ、陽平……」
力なく名前を呼ぶと、陽平はあたしに一瞬だけ目を向けて口元を緩めて微笑んでくれた。
その顔にドキッとして、鼓動が飛び跳ねる。
な、なにこれ……。
なんで。
陽平にドキッなんて。
それよりも……大丈夫なの?
この人数だよ?
「大丈夫だ。愛梨は絶対に俺が守ってやるから。危ないから、ちょっと離れとけよ」
泣きそうになるあたしの頭を優しく撫でると、陽平はあたしを自分から遠ざけるように背中を押して男たちから離した。
そして、さっきよりも鋭く威圧的に怒声を響かせる。
「愛梨に手ぇ出して、ただで済むと思うなよ」
なんでだろう。
こんな歯の浮くようなセリフに、ドキドキしているあたしがいるのは。
陽平は本当のヒーローのようで。
いつもはイジワルなのに、今この瞬間だけはすごくカッコ良く見えた。