…ときだった。


「いつまで待ってればいいー?」

呆れたような聞き覚えのある声が聞こえてきて、慌てて先生と離れた。


「邪魔すんなよユータ」

「俺だけじゃなくてこいつらも待ってんの。人前でイチャイチャすんなよなー。」

少しムスッとした先生は、田村さんに向かってそう言うとあたしの手を引いて歩き出した。


「人前?こいつら?」

あたしだけが何も分からなくて、先生について行きながら必死に頭の中を整理する。


「まーお!」

「へっ?あ、梨花!」

「よかったね、おめでとう」

ニコニコ笑う梨花の隣にはシロもいて、その後ろには加地くんまでいる。

「咲良のために俺らが一肌脱いでやったわけ。どう、俺の名演技!」

「どっちかって言うと名演技だったのは加地くんだよね。茉央も騙されてたし」

「何で!俺も名演技!」

シロと梨花の言い合いに、さらに頭が混乱する。

加地くんの名演技って、何?