いつの間にか、
周りにいたはずのお客さんがおらんかって
店のなかはしーんとしてた。
店長がお皿を拭く音だけが
部屋の中に響いてる気がした。
「鳥井は優しいね」
ふわっと笑った琉伊
「俺は全然優しないで。
優柔不断の臆病者や。ほんまに」
まともに琉伊の顔がみれへんで
視線はテーブルの上ある自分の飲みかけのコーヒー
自分の情けない顔が
液体の表面に写ってそうで目を閉じたくなる
「そんなことないよ
誰かのためを想ってるから、
そうやって考えて悩んで苦しんでる。
それは優しい人にしかできないことだと思う」
琉伊の優しい声がやけに響く
「…鳥井、終わらせたら?」
…
その言葉で俺の中の何かが音をたてる。