ツンツンしてて
俺に対しては口が悪い。
だけどそんな所も
可愛くて仕方がない。
だから、お願い。
「幸せだな…って思っただけ」
「だから、ずっと傍にいてね?」
これ以上好きにさせないで。
無自覚な、小悪魔彼女さん。
「……あ、美味しそう」
昼休み。教室でメロンパン片手に雑誌を読んでいた芽依ちゃんの口から何気無くポツリと呟かれた言葉。
その瞬間俺は、凄まじいスピードで雑誌に目を向けた。
……そこには、先月末にオープンしたお洒落なカフェ。
学校からそんなに遠くはないけど、芽依ちゃんにとっては家からは真逆の方角。
行きたいのだろうか、なんて芽依ちゃんの顔を見てみるけど
その呟きに別に深い意味はなかったみたいで、既に次のページのスイーツに目を輝かせていた。
……芽依ちゃんと付き合いはじめて、一週間。
デートに誘いたいけど、どこに行けば良いのか分からず夜な夜な一人で悩んでいる。
「なあ、芽依ちゃん?」
「んー」
雑誌から目を離すことなく返事をする芽依ちゃん。
……雑誌に負けてるぞ、俺!!
「今度の土曜って暇?」
「土曜……?」
芽依ちゃんの行きたいところに行けば良いんだと気付き、まず予定を確認。
んー、どうだっけという芽依ちゃんの視線はまだ雑誌に向けられたままだけど、気にしない気にしない。
「ごっめーん持田。その日は私が芽依とデートなの」
ごめんという言葉は悪いと思ったときに使う言葉であって。
決してニコリと笑みを浮かべながら使う言葉じゃないと思う。
「お前、悪いなんて思ってねーだろ」
そう言って、俺の芽依ちゃんに後ろから抱きつく近野を睨む。
くっそ…腹が立つ。ベタベタしやがって。
彼氏になる前は平気だったのに、彼氏になるとベタベタして嫌われたらなんて思うと臆病になる。
前は嫌われてたから、そんな心配しなくて良かったのに。
だから思うがままに芽依ちゃんに抱きつける近野が羨ましくて仕方がない。
「ーー日曜日」
「へ…」
「だから、日曜なら暇だけど。…持田、忙しいの?」
「いやいや、忙しくない!てか芽依ちゃんの為なら用事があっても365日暇なことにするし」
「いや、別にそこまでしなくていいから」
呆れたように笑う芽依ちゃん。
普段ツンツンしてる分、不意に見せる笑顔や優しさにキュンとする。
てかさ、付き合いだす直前くらいまで優しくなってたのに
付き合いだしてまた冷たくなったよな。
……まあ、そんなところも好きだけど。
って俺、変態っぽくね?
「それで、日曜なにするの?どこか行くの?」
漸く雑誌を閉じた芽依ちゃんが俺に聞く。
ついに雑誌に勝利!!
よくやったぞ持田 海。よくめげなかった。
「芽依ちゃんの行きたいところに行こーぜ」
「私の行きたいところ…?」
何で、と不思議そうに首をかしげる。
あれれ、デートの誘いだって伝わってないパターン?
「そ。初デートなんだから芽依ちゃんのワガママぜーんぶ聞くよ」
だから、今度はちゃんと伝わるように言う。
「そっか。デート……か」