「あっ……オサキッ!!」

「……」




──……そこに居たのは、礼儀正しくちょこんと座っているオサキだった。

尻尾をふわふわと揺らしながら、オサキは私たちにペコリと頭を下げる。


……よかった、オサキだったんだ。

戻ってきたのなら戻ってきたで、すぐに私のところに来てくれたらよかったのに。




「オサキ、どうして2階の部屋に? 私、誰かに侵入されたのかと思ってビックリしたんだよ?」

『……』

「オサキ? どうしたの?」


『……オ マエ……ロ ス………殺…ス……』

「……え?」





……殺す……?

オサキが、私を……?





『シ ネ……シネ……死ネ……!!』

「……っ……!!」





──鋭い爪と、鋭い牙。 そして、狂気に満ちた赤黒い瞳。


……彼が私に襲いかかってくる僅かな時間の中で見えたのは、薄笑いを浮かべたカゲロウの顔だった。