「お前はアレか、あの衣装を俺に着てもらいたいんかね?」




……不機嫌な声なのに、言ってることはメチャクチャだ。

八峠さんがコスプレ衣装を着るって……あぁどうしよう、想像してみたら、意外と似合ってる……。




「あ? 俺じゃなくて女の子の方に だ? んなもん着せてどうすんだよ。
……はぁ? お前はエロ親父かよ。 なんっで俺がコイツを襲わにゃいかんのだ。
だから そういうのじゃねぇって言ってんだろーが。 大体お前はなぁっ……って、切りやがったっ!!
何が『報告よろしくー、楽しんでねー』だっ!!」




……女性の声は聞こえなかったけれど、話の内容は大体わかってしまった。

女性は、私と八峠さんの関係を誤解してるらしい……。




「……おい、双葉 杏。 あの馬鹿女は俺とお前が寝ることを期待してるらしいぞ」

「……あ、やっぱりそういう流れでしたよね……」

「つーことで、俺と寝るか?」


「はっ!? いやいやいやっ、なんでですかっ!!」

「暇だし?」

「ひまっ……暇だからって、やっていいこととダメなことがあるでしょうにっ!!」


「んなもん わかってるっつーに。 で、服はあったのか? あったならさっさとシャワー行って来いっつーの」




……もうっ。

この人はまた冗談ばっかりっ。

ほんっと、嫌な人っ。




「……Tシャツとズボンお借りしますねっ。 失礼しますっ!!」

「はいはい、ごゆっくりー」




ふんっ。 と鼻息を鳴らしながら歩き出す私に、八峠さんは眠たそうにあくびをしながら ひらひらと手を振った。