病院に駆けつけると、見慣れたフェラーリを見つけて、坂月の気分が暗くなる。
身が竦みそうな程緊張していた。
諒と会うのは解任決議以来だ。
―果たして行くのは正しいのか。
今更のこのこと行って、諒に罵られ、殴られてもおかしくはない。
病室の前で、一瞬迷い、立ち止まったが。
すっと深く息を吸い込んでから、躊躇いがちにノックした。
直ぐに返事がして、坂月はドアを開ける。
「失礼致します―」
集中治療室ばりの設備が出迎え、以前より大分細くなった巌がベッドに寝かされたまま、目だけで坂月を捉えていた。
痩せ型長身で、初老の巌は、長いこと眠っていたせいか、呼吸が難しいようで、呼吸器にそれを補ってもらっている。
そして。
「よぉ…」
その隣に座る、諒が振り返った。
その二人の光景に。
胸が強く痛んだ。