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「姉ちゃんさ…秘書かと思ってたけど、ボディガードの間違いだったの?」



「いてて…ってぇー。」




高校へ行く前の駿が、呆れたような顔で、消毒液を浸した綿を傷口にぽんぽんと置いていく。




「一応姉ちゃんだって女なんだからさ、そこらへんはきちんとしてもらいなよ。嫁入り前なのに顔まで傷つけちゃってさ。」




「一応って何よ、一応って。」



痛みに顔を顰めながら、沙耶は口を尖らせた。



昨日。



救急車で運ばれた後、沙耶は石垣家御用達の病院のベットで目を覚ました。


動こうとした途端、走る鈍い痛みに思わず肩を見ると、処置を終えた後だったようで、包帯が肩にぐるぐる巻かれていた。


詳しく検査する為にも、入院を勧められたが、頑なに断って、一人で勝手に家に帰ってきてしまった。



翌朝、やはり、というべきか。


熱を持った肩に、せめて湿布位もらってくればよかった、と反省を噛み締めた。



「はい、終わり。つーかそんなんで行くつもりなの?」



負傷した肩はジャケットに通すことができず、反対側に引っ掛ける形でスーツを着た沙耶は、駿の問いに「当たり前」と答えた。



そこへ、インターホンが来客を告げる。