チチチ、と小鳥が囀(さえず)る朝。
「おはようございます、秋元様」
毎日少しのズレもなく、全く同じ時刻に。
「おはようございます、中村さん。」
中村が玄関で沙耶を出迎える。
「そして、お邪魔します!」
「よろしくお願い致します。」
沙耶は慣れた足取りで屋敷の中へと入り、中村は一礼して道を譲る。
「あ、中村さん、いつもの貸してもらえますか?」
「準備しております、どうぞ。」
「ありがとう!」
この会話も、ここ一ヶ月、同じ。
沙耶は差し出されたブツを受け取ると、一段抜かしで階段を上る。
そして大股で石垣の眠る部屋の前まで行き、扉の隙間からそっと様子を伺った。
相変わらず、あの日―石垣の母の命日―以外は寝起きの良かった試しがない。
今だって爆睡している背中が見える。
カーテンが陽の光を隠してしまっている為に部屋の中は薄暗い。
紅茶の香りのする中、沙耶は抜き足差し足で、主のベッドの傍らへと近づいた。
そして、片手に例の物。
もう片手では携帯を操作する。