「送ってくよ」

「え?いいよそんな…」

同じバイト先で知り合った航平。
前まではいい友達だと思ってたのに、いつの間にかわたしの好きな人になってた。

「雨降ってるし、いろいろ話したいしええやーん」

関西出身でもないくせに、航平は笑いながらそう言った。

内心嬉しい。ものすごく。
でも、期待しちゃうのが苦しい。


わたし達はバイト先をでて、傘を差しながら並んで歩き出した。

たわいもない話をしていると、あっという間にわたしの家に着いてしまう。

…帰りたくない。まだ一緒にいたい。


「…送ってくれてありがとう!気をつけて帰ってね!」

なんて、本音が言える訳がない。

「ほーい。じゃあ、また明日な」

明日もバイトで会えるし、我慢。
そう言い聞かせて、作り笑いをして手を振った。