「あ~ぁ・・・。」


青色の傘を差し、トボトボといつもの駅へ行く道を歩く。


雨が、黒色の鞄と紺色の制服を濡らしていく。


2年前、交通事故で父親を亡くした日も、こんな風に雨が沢山降っていた。


お母さんと私は、硬く目を閉ざしたお父さんを前に雨に負けないくらい泣いた。

 


・・・私がお父さんを殺した。
 





ほんっとに雨は嫌い。






駅に着き、満員電車の中に体を押し込める。



「・・・ッ」


体と体が密着する。身動き一つさえできない。



きつい・・・・・。今日は一段と・・・。



「ひっ」


私の隣にいる中年太りのおじさんが、電車のゆれのせいで当たっていたバッグをどけようとする仕草をしながら、明らかに私の制服の上から胸を触っていた。


気色が悪くて、叫びたかったけど声が出なかった。



「・・・っ」



ギュッと目をつぶり、早く降りる駅になることを祈った。



「次は~大木駅~」



そんな放送が電車内に流れた。


私の降りる駅は、次の駅・・・。



人が出入りしたけど、おじさんの手は人目に付かないところにあったので誰も気づいてくれなかった。



・・・でも、急に触っていた手が離れた。



何がおきたのかわからなくて硬く閉ざした目をそっと開けてみた。



「・・・おじさん、何してるの?」


薄茶色の髪を偏り少し短目まで伸ばした男の子が私の隣に立っていた。