カタッ

自宅で唯が無言で机から箱を取り出す。

静かに箱の蓋を開けると、
中から出てきた小さい紙切れ。

何度も何度も見ては閉まって。


だからか、
紙切れもよれよれになってきていた。

どれだけ時間が経っても、

ずっと捨てられなかったけど、
捨てるのなら今なのかな。


そう思いながら
小さい紙切れを広げた。

まばらな大きさで書かれた電話番号は、
今じゃ必要のないものになってしまって。


持っていても意味がないもので…


彼とは、彼との記憶とは、

さよならしなきゃならない。


私は指に力を入れて、

ビリッと音を立てながら
紙をちぎった。


それをゴミ箱へとパラッと捨てる。