何で沙奈がそんなに必死に隠そうとするのか。

何で宮崎は何も教えてくれないのか。

何で水木は…、
あんなに悲しそうに俺を見るのか。


何も分からない。


自分が思ったことは、
思いだそうとしていることは、

間違いだって言うのか…


日向がガシガシと頭を掻く姿に
沙奈はぎゅっと制服のスカートを握りしめた。


日向の記憶の欠片が
少しずつ取り戻されてくのが、

嫌でも分かる。


お願いだから思い出さないで。


そう思うのに、
それすら言えない。

だってその言葉は、

きっと日向の記憶を
さらに引き出すキッカケになるかもしれない。


私は、ただ見守ることしか出来ない。