「うっし」 私はふんっと鼻息を鳴らして、教室のドアからこっそり覗き込む。 窓側の一番後ろの席、頬杖をつきながら黄昏ている人物。 「……うむむ。やっぱり、かっこいいなぁ」 何度見ても、ほれぼれしてしまう。 形のいい薄い桃色の唇に、長い睫毛を縁どったどこか冷静な瞳。 長くも短くもない黒髪は、耳にかかるたびウザったそうに払う姿がこれまたかっこいい。 ちらほら教室で彼の動向を窺っている女子もいるし。 まあ、見た目に騙されて痛い目みるんですがね。 あの人の場合は。